高尿酸血症・痛風
高尿酸血症とは
血液中の尿酸の濃度を示した尿酸値が、7.0mg/dLを超えている状態をいいます。高尿酸血症は30代~50代の男性に発症しやすい病気です。女性は、女性ホルモンに腎臓から尿酸の排出を促す働きがあるため少ないですが、閉経後は女性ホルモンの分泌量が減るため、高尿酸血症を発症することがあります。
痛風とは
体内の尿酸が過剰になった状態が続き、血液に溶けきれなかった尿酸が結晶化し、関節などに沈着することで痛みが生じる病気です。沈着していた尿酸の結晶が関節の中ではがれると、免疫細胞である白血球がそれを排除しようと攻撃します。その結果、関節の炎症(痛風発作)を引き起こすのです。
尿酸とは?
体内で古い細胞が壊される際に生まれるのが「プリン体」です。役割の終わった「プリン体」は肝臓で分解され「尿酸」となり、尿と一緒に排泄されます。体内の尿酸の量は常に一定に保たれています。食品のプリン体から作られる尿酸の量は全体の20%に過ぎず、残りの80%はもともと体内にあるプリン体を原料に作られています。
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何らかの要因で尿酸の産生と排泄のバランスが取れなくなると、血液中の尿酸の濃度が高くなります。痛風の発作を引き起こす要因になります。
症状について
高尿酸血症そのもので症状が出ることはありません。高尿酸血症が長期化すると尿酸が結晶化し、関節にたまれば痛風発作が起こります。痛風発作はある日突然起こり、腫れと激痛を伴うのが特徴です。発作が起こると2~3日は歩けないほどの痛みが続きます。その後、1~2週間で症状は治まりますが、治療をしないと発作を繰り返します。
痛風発作の起こりやすい場所
- 足の親指の付け根
- 足首
- 足の甲
- 手首
- ひじ
- 膝
高尿酸血症の合併症
痛風以外、あまり自覚症状が現れませんが、高尿酸血症は様々な合併症の黄色信号です。
- 腎機能障害→尿酸の結晶が腎臓に沈着して、腎臓の働きが低下する。腎臓の働きが低下すると尿酸の排泄力が弱くなり、尿酸値がさらに高くなる。腎障害が進むと腎不全を起こし、透析が必要になることもある。
- 尿路結石→尿が酸性になって尿の中の尿酸が溶けにくくなり、腎臓や尿管、膀胱、尿道に結石ができる。
- 痛風結節→尿酸の結晶が皮下組織(皮膚の下)に沈着して、硬い結節を作る。ひじや手の甲、耳介など、体温の低いところにできやすい。
高尿酸血症は高血圧や高脂血症、糖尿病、肥満などの生活習慣病や慢性腎臓病を合併しやすいと言われます。生活習慣病を放っておくと動脈硬化を促進させ、脳卒中や心臓病などの命に関わる合併症につながりますので、早めに見つけて放置せず進行を抑えることが大切です。
検査について
問診
- どのような症状があるか
- 食事、運動、飲酒などの生活習慣
- ストレスの有無
- 持病があるか
- 家族に高尿酸血症の方がいるか
身長・体重
体重増加に伴い、血液の尿酸値は上昇します。身長、体重からBMI(肥満度・体格指数)を計算してみましょう。
BMI=体重(kg)÷身長(m)÷身長(m)
(例)体重70kg、身長175cm
70÷1.75÷1.75=22.9 ➡ 標準
※BMIの基準値は18.5~
血液検査
- 尿酸:痛風の原因物質を調べる検査です。
正常値 2.1~7.0mg/dL - CRP:炎症の程度を調べる検査です。
正常値 0.3mg/dL未満 - クレアチニン、BUN:腎臓の機能を調べる検査です。合併症の有無の確認や治療法の選択を決める上で必要な検査です。
正常値 クレアチニン 男性1.1mg/dL以下
女性0.8mg/dL以下
BUN 20mg/dL以下
尿検査
痛風による腎障害の有無や、病型の鑑別を調べるために必要な検査です。
- 尿中尿酸
- 尿中クレアチニン
- 尿蛋白
- 尿潜血
血圧測定
高血圧になると腎臓の血流量が減少し、尿酸を尿に排泄する機能が低下し、尿酸値が上がります。血圧のコントロールが重要になります。家庭血圧の目安は130/80mmHg未満です。
他に、肝機能、糖尿病、高脂血症の有無を調べる一連の血液検査も実施します。また、合併症やその他の病気の早期発見のため、胸部レントゲン検査、心電図検査、血圧脈波検査を実施しております。
治療について
尿酸値を下げるための基本は生活習慣の改善です。ただし、次のような方は薬物療法も必要です。
- 尿酸値が9.0mg/dL以上
- 尿酸値が8.0mg/dL以上で合併症がある
※合併症:腎障害、尿路結石、高血圧、高脂血症、狭心症、心筋梗塞、糖尿病など - 尿酸値が7.0mg/dL以上で、痛風発作を起こした、または痛風結節がある
治療の目安は尿酸値6.0mg/dL以下です。
食事療法
1.適正カロリーを知る
肥満を解消することで尿酸値が下がります。自分に合った1日のエネルギー摂取
量を確認しましょう。
①標準体重を求める
身長(m)×身長(m)×22
(例)身長175cmの場合
1.75×1.75×22=67.4
標準体重は67.4kg
②エネルギー摂取量を求める
標準体重(kg)×身体活動量(kcal)
(例)標準体重67.4kg、立ち仕事が多い場合
67.5×30=2022
1日のエネルギー摂取量は2022kcal
身体活動量:体重1kg当たりの必要エネルギー
軽い(デスクワークが主、主婦) 25~30kcal
ふつう(立ち仕事が多い) 30~35kcal
重い(力仕事が多い) 35kcal~
2. プリン体の多い食べ物を控える
ポイントは食べる量と頻度です。摂取するプリン体の量は「1日400mgを超えない」ようにしましょう。
プリン体が極めて多い食品(300mg~/食品100gあたり)
- 鶏レバー
- マイワシ干物
- あん肝酒蒸し
- イサキ白子
プリン体が多い食品(200~300mg/食品100gあたり)
- 豚レバー
- 牛レバー
- カツオ
- マイワシ
- 大正エビ
- マアジ干物
- サンマ干物
※プリン体は水に溶ける性質があるので、「ゆでる」・「蒸す」・「煮る」などの調理法がおすすめです。
3. アルカリ性食品を多く食べる
尿酸値が高いと尿が酸性になり、尿路結石ができやすくなります。野菜や海藻などをたくさん食べましょう。
- 野菜(人参、ほうれん草、ごぼう、キャベツ、大根、ナス)
- 藻類(ひじき、わかめ、こんぶ)
- きのこ類(干ししいたけ)
- いも類(さつまいも、じゃがいも、里芋)
- 豆類(大豆)
- 果実(バナナ、メロン、グレープフルーツ)
- 乳製品(牛乳、ヨーグルト)
4.アルコールを控える
ビールに限らず、アルコールそのものが尿酸値を上げる原因になります。プリン体の量はお酒の種類によって違いますが、尿酸値が高い方はお酒を控えましょう。
1日の飲酒量の目安
- ビール500mL
- 日本酒180mL
- 焼酎90mL
- ワイン180mL
5. 水分を十分にとる
尿の量が増えれば、尿とともに尿酸がたくさん排泄され、尿酸値が下がります。1日に2L以上を目安に、水やお茶でまめに水分補給をしましょう。
管理栄養士による栄養指導も行っております。事前予約制です。お気軽にお声かけ下さい。
運動療法
運動は体重コントロールのためにも大切です。ただし、激しい運動は尿酸が産生され、尿酸値を上げる原因になるので要注意です。週3日程度の軽い有酸素運動を継続して行いましょう。
良い運動
- 早歩き
- 水泳
- 軽いジョギング
悪い運動
- 過度な筋肉トレーニング
- 息がきれるような激しい運動
注意点
- 体調のすぐれない時は無理して行わない。
- 合併症などがある場合は医師に相談しましょう。
ストレス解消
精神的なストレスも尿酸値を上げるといわれています。十分な睡眠、適度な運動、趣味をもつなど、自分なりのストレス解消法を見つけてください。
薬物療法
1.痛風発作を抑える治療
痛風発作が起きたら、激痛を和らげるために、消炎鎮痛剤を短期間のみ使います。
発作が起きた時 ⇒ 患部を心臓より高くして、冷やしましょう。
2.尿酸値を下げる治療
尿酸値を下げる薬は、発作が治まってから使います。痛風発作の原因である尿酸値を抑えておかないと、痛風発作を繰り返します。尿酸値を下げる薬には、体の中で尿酸をできにくくする薬(尿酸生成抑制薬)と、尿の中へ尿酸を出しやすくする薬(尿酸排泄促進薬)があります。
薬を服用する際は医師の指示に従い、自己判断で薬を止めたりしないようにしましょう。根気よく治療を続けましょう。
最後に
「健康診断で指摘があった」や、「以前、痛みがあった…」など不安を抱えている方は、是非一度ご相談下さい。健康診断結果などありましたら、ご持参いただけると大変助かります。